(仮)KOURO

読書の記録やセミナーなどのふりかえり

1/23(土) ビジネス・コミュニケーションリーダー養成講座 第三回目のまとめとふりかえり~その1~

1)講座概要

日時:1/23(土) 15:00~18:00
場所:京都大学 デザインファブリケーション拠点
講師:塩瀬隆之(しおせたかゆき) 京都大学総合博物館 准教授

↓講座概要
http://www.design.kyoto-u.ac.jp/activities/forthcoming/6733/

 

★つぶやき
塩瀬先生のことは、この講座と同じ京都大学デザイン学大学院連携プログラム主催の「イノベーション都市をつくる」という講演でお近づきになった方から、たんぽぽの家さんにかかわられている人だと聞いていて、ずっと興味をもっていた。

イノベーション都市をつくる
http://www.design.kyoto-u.ac.jp/activities/forthcoming/5504/
↓たんぽぽの家
http://tanpoponoye.org/

 

2)自己紹介がわりの動画
塩瀬先生が手がけたワークショップの動画を観る。
三重県立博物館のリニューアルオープン前にやったワークショップ(以下、WS)で、展示品が入っていないそのときにしかできないもの。

「人間が展示品になりきって博物館の機能を体験するWS」!

まず家族のひとりが展示品役に選ばれ、自分が何になるかを決める。
→展示品役の人が普段は絶対に入れない経路から保管庫に搬入され、展示されるまで100年間眠る(ライトOFF/ONで体感)。
→ずらっと並べる展示室に、自分は何の展示品かを書いたテロップをもった人たちが年齢順に登場。
→入場した家族が展示品を鑑賞する。

 

★つぶやき
この動画で一気にひきつけられる。
会場にはコトバで表現すると「おお!」というドヨメキが起こっていた。
塩瀬先生は講座の内容やそのメンバーを想像して、この動画で自己紹介することを決めたとのこと。
このような動画をいくつかもっているらしい。
どこでも同じ自己紹介をしていたらダメだな。
その場に集まった人たちの興味をひきつけられるような、自己紹介の引き出しをストックしておくことってカッコイイ!

 

3)「①言葉」-「②観察」-「③極端」-「④問い」
これまでとちがうものを生み出そうと思ったらそれなりの手続きがいる。
たとえばいまはやりの「イノベーション」。
時流に乗ろうと思ったのか「イノベーション」を冠する部署がつくられたりするが、何をしたらいいのか困っているところが多い。つまり名ばかり「イノベーション部」というわけ(笑)
これは「イノベーションとは何か?」を考える以前の、イノベーションの種が育つのを遮るソシキの問題だったりする。

"同じ"メンバー、会議の方法、モノサシでは、これまでと同じことしかできない。
"新しい"メンバー、会議の方法、モノサシがあって、新しいことができる可能性が生まれる。

ブレーストーミングをして新しいアイデアを出そうとしても、よいアウトプットが生まれないことがある。
ブレストを「幅跳び」にたとえてみると、よいアウトプットが生まれないブレストはいきなり結果を求めて「立ち幅跳び」になっている。
「幅飛び」には「助走」が大切。「助走」があってはじめて「大ジャンプ」が達成される。
ここでたとえられている「助走」とは、まず"言葉をソロエル"ことである。

 

4)①言葉の共有WS
▼「コケル」から受け取るモノ
最初のWSとしてグループに分かれて「コケル」様子を描いてみる。
手を大きく広げることでその様子を表現したり、その原因である石などを描くことによって表現したりと人によって様々。

ここで看護師の申し送りの様子の紹介。

Aさん「この患者さん、よくコケルから気をつけてね」
Bさん「はい、わかりました」

Bさんは、この患者さんがコケないように工夫してみたらしい。

足をひきづって歩いていてもつまずかないように、スリッパに「すべーる」というテープを貼ってみたり。
暗いところで段差につまづいて転ばないように、段差や障害物に蛍光テープを貼ってみたり。
つまり"つまづいて"コケルからと思って摩擦を"減らす"工夫をした。

しかしこの患者さんは"つまづいて"コケルのではなく、"すべって"コケル人だったのだ。
だからこの場合の工夫の正解は、摩擦を"減らす"のではなく"増やす"ほうだったわけである。

 

▼10年後を考える
よくある問いに「このソシキが『10年後』どうあるべきか考えてみてください」というものがある。
不思議なことに、この問いを議論しても、答えはその問いが「20年後」であっても「30年後」であっても同じものになることが多い(笑)

ここでWS。「自分の家でこの10年で変化のあったものを描いてみる」。
ぼくが描いたのは「トイレ」。
この10年で、水洗が手動から自動に変わった(もしかしたらもっと前から変わっていたかも)。

よく出る答えは、やはり「携帯電話」とのこと。
ガラケー」から「スマホ」への時代による変遷を見ていると、10年という歳月の変化を実感しやすい。
でも10年前に「スマホ」がここまで普及して、片手ひとつでいろんなことができるようになるなんて想像できただろうか?
それぐらい未来を予測することはムズカシイ。

だから大切なのは、予測のムズカシイ10年後のことを考えるよりも、自分たちが変化に対応できるようなソシキであるのかとか、変化があったときに会社のリソースをどこに注入するのかとか、そもそも自分たちがなぜ10年後のことを知りたいと思っているのかとかを考えることではないか?

そのためには「言葉をソロエル」ことが不可欠で、とはいってもあらゆる「言葉をソロエル」のは現実的にムズカシイから、自分たちにとってこの言葉だけはアヤフヤにしておいてはいけない、というものをソロエておけばよい、とのこと。

ここでWS。「意味があまり共有されていないのに、なんとなく使われているコトバを出し合おう」。
ぼくが出したのは「インクルーシブ」「サスティナブル」「デザイン」「ふりかえり」(ほかの人が出して気になったのは「リーダーシップ」)。
ちなみに、このWSでグループのイチバン人気のワードは「デザイン」だった。

 

★つぶやき
「デザイン」という言葉はよく使うし、ぼくが「デザイン」と言う場合それは「意匠」ではなく「問題解決」の意味で使っていることが多いけれど、だいたい「意匠」のほうで受け取られて、自分はそういうのにうといから、と拒否反応を示されることがある。

しかしそういう人に「デザイン」ってつまり「問題解決」なんですよ、普段あなたがそうとわからずやっていることが「デザイン的」なものかもしれませんよ、とうまく説明できるほどの蓄積はないから困っている。ぼくの当面の目標は、「デザインとは何か?」ということを人に理解してもらえるように説明できるようになることかもしれない。

ちなみに塩瀬先生は「インクルーシブ」が何かわかるまで、ずいぶん時間がかかったというようなことをおっしゃっていた。
ホンマに?と一瞬思ったけど、素直に受け取ると塩瀬先生ほどの人でもそれだけ苦労するのだから、ぼくみたいな凡人はなおさら「言葉をソロエル」ことを愚直に追求していかないといけないなと思った。

 

▼言葉を届けるには……
ピグミー系狩猟民族の言葉の紹介。
文化人類学系の研究者が置いていった文明の利器を、よくわからないながら使いこなしているらしい(だからクソ暑いのにもかかわらず、カッコイイからってマフラーを巻いている人もいる。そのキモチ、わからないでもない)

この部族では「携帯電話」のことを「コト・ン・バンベ」というらしい(書き写しマチガイの可能性大!)。
「コト・ン・バンベ」は「トカゲの皮」の意。
「携帯電話」のことをなぜ「トカゲの皮」と言い表すかというと、もともとあった糸電話的なものの糸に使われている素材が「トカゲの皮」だったからとのこと。

「テレビ」のことは「イェン・ゲイェンゲ」というらしい(「携帯電話」よりマチガイの可能性大!)。
「イェン・ゲイェンゲって何だと思いますか?」と質問されて、グループで考えて出した答えが「仏壇的なもの」。テレビからは声が出るので、ご先祖さまと話ができる「仏壇的なもので言い表そうとしたのではないか?」となった。

で、答えは「水面」。いろんなものが写り込んで見えるさまが「テレビ」のようだから、とのこと。
そう聞くとナットク。

ここで塩瀬先生の解説。

「言葉」というのは「インデックス」だから、それ単体ではその「言葉」が何を表しているかはわからない。
「言葉」には人それぞれの「体験」がぶらさがっており、その「言葉」が何を表しているか理解するためには、その「体験」を擦り合わせる必要がある。

「自分の生活世界での体験を駆使してしか言葉の意味はわからない」
「言葉を届けるには相手の体験を想起させる言葉を選ぶ」

 

★つぶやき
うまく意思疎通できないとき、コチラの言うことをなんでわかってくれないのか、この人は何を言おうとしているのか、とイライラするのではなく、普段から相手のことを観察して、この人がどんな体験からこの言葉を選んでいるのか考えてみるクセをつけよう。